●企業の生産性の異質性と貿易
Marc Melitz. 2003. “The Impact of Trade on Intra-Industry Reallocations and Aggregate Industry Productivity.” Econometrica v. 71 no. 6, pp. 1695-1725.
今まで紹介してきた論文の中にこの論文の何らかの拡張であるものが多く含まれているので、簡単に説明することにした。
国際経済学の企業レベルの定型的事実として以下のものがあげられている。
事実1:財を輸出している企業は企業全体から見ればごく一部である。
事実2:輸出を行っている企業はそうでない企業よりも規模が大きく生産性が高い。
事実3;貿易自由化によって大規模で生産性が高い企業が輸出によって生産を拡大する。
事実4:貿易自由化によって小規模で生産性が低い企業は市場から撤退している。
事実5:貿易自由化によってセクターレベルの生産性は向上している。
Melitzの論文は独占的競争の一般均衡理論に企業の生産性の異質性を導入することで、これらの事実を説明する一般的で使いやすいモデルを提供している。
モデルの設定としては、
0.参入を考えている企業が多数ある。
1. 参入前はどの企業も自分の生産性を知らない。参入するためには一定の参入コストを払う必要がある。
2. 参入後に自分の生産性を知る。その後、各企業は独占的競争状態のもとで利潤を最大化する生産量を決定する。その結果として、生産性が高い企業ほど多く生産する。また、生産にかかる固定コストもカバーできないような生産性が一定水準以下の企業は退出する。
3. 2によって算出される参入の期待利潤がゼロになるように参入時の参入コストが決定される。
4. 実際に参入が行われて、各企業が自分の生産性を知り、生産を行う企業は利潤最大化水準で生産を行う。
(参入した企業にとっては利潤は0でない)
ここまでは閉鎖経済の一般均衡モデルであったがここからは開放経済を考える。
4. 外国経済に参入するのには一定の固定コストがかかる。また輸送費が上乗せされる。
5. 固定コストや輸送費を払っても外国市場で利潤を上げられるような生産性の一番高い水準の企業が輸出を開始する(事実1、事実2) これらの企業は閉鎖経済よりも生産を拡大している。(事実3)
6 他方、生産性が高い企業が生産を伸ばしたことにより生産資源をひきつけることができなくなった生産性の低い企業は市場から撤退する。(事実4)
7 結果として資源再配分の結果セクターレベルの生産性は向上している。
このモデルはいろいろな方向で拡張されている。
直接的な拡張としては
FDIの説明(Helpman, Melitz, Yeaple (2004)AER)
生産する財の数の内生化による中国における外資と国内企業の新製品導入の差の違いの説明(Brambilla, mimeoの紹介を参照)
代替弾力性のセクター間の異質性と2国間貿易量にもたらす含意(Chaney, mimeoの紹介を参照)
南北間で製品の品質に差とその途上国内の賃金格差へのインプリケーション(Verhoogen, mimeoの紹介を参照)
実証をする人間にとっては企業レベルのインプリケーションが出せるところが大きいです。