●政治的コネと企業価値の関係
開発経済学の講義でRay Fismanがゲストレクチャーをしに来た。政治家とのコネ、汚職、脱税、密輸、出会い系サイトの研究の実証の第一人者が自分の研究を肴に研究の進め方をアドバイス。
彼のJob Market PaperであるEstimating the Value of Political Connections, AER, 2001の研究過程がとても興味深かった。この論文はインドネシアで(当時)トップのスハルトとのコネがある会社とコネがない会社で、スハルトの健康状態の悪化のニュースが会社の株価率収益に与える影響がどう異なるかを実証した論文だ。
細部は違うかも。
1研究開始前:アジアと中南米を数ヶ月ぶらつく。
→ビジネスにおけるコネの重要度について研究しようと思ったらしい。
(他にも考えたテーマはあって、このプロジェクトが論文書けそうになるまでは
他のプロジェクトの進めていたらしい。)
2テーマが多くの人に興味をもってもらえそうかチェック。
→開発系、政治系など興味を持ちそうな人は多そうだ。
3新しい貢献ができそうかチェック。
→コネと会社のパフォーマンスは誰も厳密に実証してないじゃん!!
4どう実証するか考える。
→政権交代(インドネシアに限らず)をイベント(コネの価値の外生的変化)にできないか?
→政権交代だとインパクトが多面的すぎて、会社のパフォーマンスがコネの変化のせいなのか
政権交代そのものの変化のせいなのかわからなくなってしまう。
→結局必要なデータ、
1会社の価値の指標。
2会社価値への影響がコネの有無で異なるがコネ以外の経路では影響しない「何かしらのイベント」
3会社ごとの政権トップとのコネの有無の指標。
5データを探す。
何かしらの情報を持っていそうな人にアポをとりまくり話しまくる。
5.1 会社の価値の指標
→株価収益率。
5.2 「何かしらのイベント」(インドネシアに限らず)
→候補1、選挙での意外な結果(事前予測と違う結果)
→候補2、香港の返還
→候補3、スハルト関連の何か(暴動、政治不安のニュースなど)
→歴史(か地理か他か忘れたけど経済以外の)学者が面会中に、
『「スハルトが風邪を引くと、○○(インドネシアの代表的企業)は寝込む」
というジョークがあってねえ』と言う。
→それだ!!新聞からスハルトの健康不安に関係するニュースを集めまくる。
5.3 政権トップとのコネの有無の指標
→候補1、学閥
→候補2、社長室にスハルトの肖像が飾ってあるか?
→1と2に関して企業にアンケートを取ってみる。→ほとんど返ってこない。
→生物(か物理か他か忘れたけど経済以外の) 学者が面会中に、
『△△というコンサル会社が顧客のインドネシア進出のために
インドネシア企業がどれだけスハルト一家とのコネがあるかを示す
Suharto Dependency Indexというのを作っているらしいよ。』と言う。
→実はその会社はそれまで数回接触したことがある会社だった。
(自分の研究で情報提供者が得することがなければ基本的にいい情報を得られないことを痛感)
→その会社からSuharto Dependency Indexを入手。
6計算して論文執筆。
Fismanからのアドバイス。どこまで一般的かは読む人が判断してくださいませ。
1指導教官はとにかく自分に時間を割いてくれる人を見つけること。
そして、指導教官が許す限り頻繁に会いに行くこと。
2複数相談できる人を持つこと。
(A先生に「そのアイデアにはXという問題がある。」といわれたときに、
B先生に「僕のアイデアには今のところXが障害なんですが」といい
B先生が「その問題にはPかQという対処法がある」と言ってくれれば
A先生に「A先生が指摘した問題にはPとQの対処法を見つけましたがどちらがいい?」と聞く。
などなど、と言ったことが、自分でがんばってもなんとかならないときにできる。)
3複数プロジェクトを持ったほうがいい。
理由1:実証結果が(自分の研究に)望ましくないときのリスクを減らす。
理由2:先生(特にアメリカ人)は学生のプロジェクトを(絶対評価で)「だめだ」とはなかなか言いにくい。
複数のアイデアを持っていけば相対的にどちらがいいかは言いやすいので
望みが薄いプロジェクトに時間を割くリスクを減らせる。
4研究に関係しそうな人は分野問わず会いまくって意見を交わすこと。
密輸の研究に関しては密輸商ともいろいろ話したとか。
5論文に書くかどうかはともかく理論モデルを作る、あるいは最低意識すること。
6研究のネタは新聞と歴史書に転がっている。
「毎日見つかる」と豪語するFismanに
「例えば今日の新聞からは何を見つけた?」という突込みがあり、それに対し、
「今日(3月21日)のNew York Timesのスポーツ面にはNBAの黒人ヘッドコーチは白人ヘッドコー チより解任されやすいって記事があったけど、成績をコントロールした上で、成績が悪くなくても
黒人であるだけで解任されやすいのか、成績が悪いから解任されやすいのか、成績が悪くてか つ黒人 だと解任されやすいのかきちんと実証できれば差別に関するいい論文になるよ。」
という返事。
7トピックを考えるときはどんなデータとイベントがあれば実証できるか考えること。
8途上国の研究をしたければ行け。暮らせ。