●途上国における輸出品の品質向上と賃金格差
Eric Verhoogen (mimeo)
“Trade, Quality Upgrading and Wage Inequality in the Mexican Manufacturing Sector: Theory and Evidence from an Exchange Rate Shock.”
途上国で貿易自由化と賃金格差の拡大が同時に起こるのはなぜかという問いに答えようとしている。国際経済学の古典的なHecshcer-Ohlinモデルのフレームワークでは非熟練労働集約的産業に比較優位がある途上国が貿易自由化を行うと非熟練労働と熟練労働の賃金格差は縮小することになる。しかし、これは多くの国の貿易自由化の経験とは矛盾する。
この論文は以下のような説明を試みる。途上国で貿易自由化が起こると、輸出先の先進国で競争に耐えうるために生産している財の品質を向上させようとするという行動が見られる。財の品質を向上させるためには熟練労働をより必要とする。そこで熟練労働により多くの賃金を払おうとする。その結果賃金格差は拡大する。
このロジックを企業の生産性にばらつきがあるMelitzのモデル(ここ参照)に組み込むことでより生産性の高い企業ほど貿易自由化の結果輸出を拡大し、企業内賃金格差を増大させる結果を導き出している。
そのインプリケーションをメキシコの通貨危機を自然実験として用いている。通貨危機は国内経済に大打撃を与えたが輸出競争力がついたため輸出は大きく増大した。実証研究の結果,実際に通貨危機の前後でもともと生産性の高い企業ほど通貨危機後に輸出を増大させ賃金格差を増大させていることが明らかになっている。